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第8回「地理空間情報に関するベースレジストリ利活用研究会」レポート
2024/04/10
2024年3月18日(月)、第8回「地理空間情報に関するベースレジストリ利活用研究会」をオンラインにて開催し、約70名の委員およびオブザーバーが参加しました。
冒頭で同研究会の座長を務める東京大学 空間情報科学研究センターの関本義秀教授が以下のように挨拶しました。
「今回が2年目の最後の開催で、8回目ということでかなり議論も進んでいますが、まだ道半ばでもあり、来年度以降はさらに踏み込んで、どれだけ実証的に進められるかが大事になってくると思いますので、みなさん遠慮なく活発なご意見をいただければと思います」
今回は、「不動産IDとPLATEAUとの連携事業」および「オンライン電子納品における道路関連施設IDへのマッチング」、「オープンデータを用いた道路ID等のベースレジストリの研究開発」に関する報告とともに、オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパンと林野庁、法務省、東京都の委員出席者による話題提供も行われました。
■不動産 ID-PLATEAU 連携事業の進捗報告
スピーカー:AIGID 角田明宝氏
AIGIDの角田氏が、不動産IDとPLATEAUを連携させる取り組み「不動産IDマッチングシステム」の進捗状況について発表しました。不動産IDマッチングシステムは、CityGML形式の3D都市モデルデータに建物および土地の不動産IDを属性として追加するWebシステムです。同システムでは、不動産登記データおよび登記所備付地図(14条地図)から生成した不動産ID空間データと、3D都市モデル建築物のデータ空間属性と主題属性により空間解析を行って不動産IDを付与します。
マッチングフローは、はじめに不動産登記データを登記所備付地図に結合・編集した筆ポリゴンと、建物の図形の重なり割合を判定し、建物の80%以上が筆ポリゴンと重なった場合は不動産IDを付与し、80%未満の場合は不一致として付与しません。不動産IDを付与する際は、建物の階数や床面積を不動産登記データと比較して、どれくらい一致するかマッチングスコアを算出します。1つの筆の中に複数の建物がある場合は、最も高いスコアの建物に不動産IDを付与し、他に僅差のスコアの建物がある場合は建築年や構造、用途などを判定して特定します。
実証エリアは、不動産IDおよびPLATEAUの3D都市モデルデータが整備されている全国49都市(66市区町)です。2月末時点で31市における付与率、マッチングスコア、マッチング時間を計測したところ、付与率は3D都市モデルの建築物に対して11.3%で、約560万棟のうち約63万棟に付与することができました。平均マッチングスコアは90.6%で、建築物1万棟あたりにかかった時間は、アップロードで10秒、付与作業で28秒でした。
マッチングスコアの平均が90.6%であることから、適合率から判断すると85%以上は正しい不動産IDが付与されていると考えられます。付与率向上のための課題としては、14条地図の標定ミスの解消や、14条地図と3D都市モデルの建築物データの整備年度/整備範囲の一致、3D都市モデルの建築物属性における「階数」「建築面積」「建築年」「構造」「用途」等の各属性項目の入力などが挙げられます。
今後、登記所備付地図の整備範囲が広がり、これらの課題が解決できれば、不動産ID付与の効率向上が図れるとともに不動産関連情報の収集が容易になり、不動産事業者の負担軽減や不動産市場の活性化につながるものと期待されます。また、生活インフラや街づくり、物流分野など広範囲において不動産IDが活用される環境の構築に寄与すると思われます。
2月末時点の計測結果
■オンライン電子納品における道路関連施設IDへのマッチングの報告
スピーカー:AIGID 湯浅玲於奈・田中直樹・藤津克彦氏
建設技術研究所の湯浅氏が、AIGIDで取り組んでいる自治体向けのオンライン電子納品サービス「My City Construction(MCC)」の開発状況について報告しました。現在は、維持管理段階で成果品の活用を促進するため、MCCに蓄積された自治体の発注工事や業務の成果品について「施設」の観点で網羅的かつ正確に検索できるように、あらかじめ施設IDと工事や業務の成果を紐付けることで網羅的に抽出可能にすることを目指しています。
これを実現するために必要な要件は、以下の3項目です。
(1)自治体ごとの個別カスタマイズを不要とするために、全国共通的な品質で施設IDを紐付けること
(2)低コストで納品および保管サービスを提供するために、容易に入手可能なデータで複雑な処理を必要とせずに施設IDを紐付けられること
(3)既納品成果を含めて登録時に施設IDを登録できるとは限らないので、すでに納品されている成果品に対しても施設IDを紐付けること
使用するデータベースは道路データプラットフォーム「xRoad」および全国デジタル道路地図データベース「DRM」で、試行対象案件1261件のうちxRoadデータに紐付けられたものは739件となり、残りについてはDRMデータが保有する情報を付与しました。xRoadデータとDRMデータを併用することで、 すべての案件について網羅的に既存の施設DBの情報を付与することができました。
具体的な実装方法は、まずxRoadとDRMの2つのデータベースをMCCにインプットします。これは当面のところ手動で行いますが、両データはいずれもAPIで情報連携が可能なので、将来的には自動的に連携できるようにして、受注者が基本情報を登録する際に対象施設候補が自動的に紐付けられるようにする予定です。受注者が登録する際に、例えば施設名に入っている橋の名前で検索すると工事や業務のデータに紐付けられるようにします。そして、この紐付けられた対象施設候補が正しいかを担当者が確認し、登録・公開するという手順になります。
xRoadデータの紐付けでは、無償で公開されている「全国道路施設点検データベース~損傷マップ~」にて公開されている情報を一覧整理し、紐付け対象のデータベースとして整理します。これにより、施設名称、管理者名、幅員、点検実施年度などの情報をMCCの案件情報へ追加付与することができます。
DRMデータの紐付けでは、研究開発目的でAPIを試行利用し、MCCの保有する位置情報から紐付けられる情報項目を精査したところ、DRMデータ独自のID体系である「パーマネントID」を紐付けることが可能で、そのID経由で道路通称名や車線数、リンク長、交通量、道路交通センサス年度、管理者など約200項目を紐付けられることが確認できました。
なお、MCCを使って受注者が新規案件を登録する場合は、自動的に紐付けられる情報に加えて、手動でも施設の情報を付与できるようにします。
一方、ユーザーがMCCで登録済み案件を閲覧する場合は、対象施設の業務/工事名称や住所、位置情報、発注機関名などの基本情報とともに、道路名や位置情報の近さについて判定した「関連度」を表示します。自動的に紐付けられた結果に対して編集が必要な場合は、編集ボタンを押して手動で編集できるようにします。また、成果品と施設情報データが紐付けられた結果をもとに検索できる仕組みも追加する予定です。
MCCの実装イメージ
■オープンデータを用いた道路ID等のベースレジストリの研究開発
スピーカー:株式会社情報試作室開発室・室長 相良毅氏(東京大学CSIS客員研究員)
情報試作室開発室の相良室長が、道路関連の研究に利用できるデジタル地図データの研究開発について発表しました。同プロジェクトは全国を網羅する公開可能な道路基盤データの構築を目指しており、主に研究用として使用することを想定しています。都道府県以上を「骨格道路」として全国整備し、市区町村道およびその他道路を「詳細道路」として地域別に整備するとともに、時系列を持つ道路データ管理手法も開発し、いつの時点で研究を行ったかを容易に参照できるようにすることを目指しています。
今回はOpenStreetMap(OSM)のデータをもとに骨格道路のネットワークデータを試作し、ネットワーク分析により接続性を検証しました。また、国土数値情報の「緊急輸送道路」との結合を試して、どのような問題が発生するのかを確認しました。
OSMデータの基本構造は無向グラフで、経度と緯度を持つ点である「node」と、複数のnode列を並べた「way」で構成されており、一方通行は属性として付与されています。このOSMデータから都道府県道以上を表すwayを抽出し、抽出したwayに含まれるnodeを抽出してnode間のline segment集合を作成しました。続いて、作成した集合をすべて接続して交差点と端点の部分を取得し、中間点となっている部分は経由点として並べる処理を行って、最終的に道路ノードと道路リンクから構成される有向グラフを作成しました。
このようにして作成した骨格道路のネットワークは、道路ノード数が108,379で、そのうち端点が11,658、交差点の数が96,721となりました。道路リンク数は242,425(双方通行可の場合は2回としてカウントした場合)で、道路リンクの長さの合計は397,195.3kmとなりました。主要なデータはほぼ網羅できましたが、国道の種別が曖昧な点や、路線番号がすべてに入っているわけではないため、ここから路線番号と路線種別を整理するとなると情報が不足するという課題もあります。
道路ネットワークがきちんと接続されているかを確認したところ、北海道は本州と接続しておらず、本州・四国・九州は接続していることがわかりました。また、ところどころに孤立クラスタも存在し、OSMデータに問題があると思われるケースや、民間企業が所有する道路のため骨格道路に含まれないなど、実際に孤立しているケースがありました。
次に、国土数値情報の緊急輸送道路との結合については、道路ネットワークデータと緊急輸送道路を比較し、近いと思われる道路を結合できるかを確認しました。その際、名称や路線番号が異なる場合など、属性だけでは判断できない場合もあり、座標が一致しているかどうかを見る必要がありました。結合に成功した場合は、OSMと緊急輸送道路の双方から道路の情報を取得可能になりましたが、位置のズレや縮尺の違いにより結合に失敗する場合もあり、これについてはロジックを改良中です。
結合に成功した道路リンク数は全体のうち40.27%、全道路リンク長のうち結合できた道路リンクの長さ合計は45.56%という結果となりました。今後は、曲線(折れ線)間の類似度の定義などの評価の仕方を検討する必要があると考えています。
今回の作業で明らかになった課題としては、道路の網羅率を算出する必要があること、孤立クラスタへの対応、異なる道路データの空間結合手法の改善などが挙げられます。また、ノード・エッジ識別子の命名規則や、詳細道路の管理方法、持続的に維持・管理するための時系列管理手法などについても今後の課題として取り組む方針です。
OSMデータをもとに作成した道路リンク
事例紹介に続いて、4つの話題提供が行われました。
■OSMの動向とベースレジストリに対する課題・期待
スピーカー:オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン副理事 飯田哲氏
オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパンの副理事を務める飯田氏が、OpenStreetMap(OSM)の動向およびベースレジストリに対する課題と期待について語りました。
ベースレジストリは政府がオーソライズする正しい(可能性が高い)データであり、それに対してOSMは完全性が担保できず正確性も保証されていないデータではあるものの、使い方によっては役に立つデータと言えます。
OSMにおける外部リソースの基本的な使い方は、「参照する」「インポート」「RapiDエディタでの編集作業」の3通りで、オープンデータ等で公開されている航空写真をトレースしたり、Plateauの航空写真や公共測量成果をタイル化して整理したりしているほか、CSVを登録して目視した上でデータを登録する「Map Roulette」なども使用しています。RapiDエディタは機械学習成果を利用したOSM編集補助機能付きエディタで、AIで画像を解析し、その結果を提示する機能を搭載しています。
データインポートについては、現在はPlateauのデータセットをインポートする取り組みをコミュニティの有志が行っており、これによって面的なデータの拡充が期待できますが、一方で古いデータや品質の低いデータが投入されてしまう可能性もあります。
理想のサイクルは、オープンデータを利用して、OSMのコミュニティにおいて市民の手で修正・更新したデータをもう一度オープンデータとして戻し、上流に還元することですが、現実はOSMのライセンスの問題があり、CC-BYとODbLのライセンスは互換性の問題からそのまま戻すことができません。ODbLのデータは必ずODbLとして再配布しなければならないという制限があり、これをオープンデータとして戻してしまうと、元々のオープンデータもODbLにする必要があります。
そのため、データへのフィードバックサイクルの構築が課題となっています。フィードバックサイクルが確立されることにより、フィードバックを通じてベースレジストの品質を高めることが可能となります。そのアプローチの1つとして、米国のOSMコミュニティ(OSM US)では「Public Domain Map Project」というプロジェクトが始まっています。同プロジェクトは、OSMにデータを投入するのではなく、パブリックドメインのまま保持できるようにOSMでは参照しないデータとして格納し、それをパブリックドメインとして政府に戻すというもので、米国地質研究所などが協力しています。
日本においても同様の試みを実現するためには、オープンデータの品質向上にメリットを感じる人によるコミュニティを作る必要があります。また、フィードバックされたデータの品質担保も必要となります。
Public Domain Map Projectによるフィードバックサイクル
■森林分野における航空レーザ測量の活用と解析データのオープン化
スピーカー:林野庁 計画課 全国森林計画班・森林情報高度化推進官 室木直樹氏
林野庁の室木氏が、同庁が取り組んでいる航空レーザ測量の活用と森林情報のオープンデータ化について発表しました。林野庁は近年、地形と樹木の両方のデータを取得するために、リモートセンシングの中でも、特に航空レーザ測量を推進しています。取得したデータは森林整備計画や地形等の特徴点の判読、路網整備の検討、防災対策などに役立てています。
このような森林情報を、効率的な木材の生産・流通計画の立案や、カーボン・クレジット等の民間利用ニーズへの対応、大学発ベンチャーによる効率的な技術開発の促進、相続手続きや山林の現地確認など都道府県の事務負担の軽減を目的としてオープンデータ化する取り組みも進めています。
オープンデータ化について民間企業にヒアリングしたところ、「衛星やUAVの事業者からは航空レーザ測量のデータがあると様々な用途に使えて便利である」という意見が得られたほか、石油・科学・製紙や金融機関などからは「一部の県だけデータが公開されても使いにくいので、全国的なオープンデータ化を進めてほしい」という声が寄せられました。
2023年度には、栃木県・兵庫県・高知県のほぼ全域の航空レーザ計測データをG空間情報センターにて公開しました。公開したのは森林資源量集計メッシュや樹種ポリゴン、レーザ林相図、DCHM(数値樹冠高モデル)など樹木に関する情報と、高精細な0.5mDEM(数値標高モデル)や微地形図、傾斜区分図などの地形に関する情報です。
10月に公開してから4カ月の間に、3県とも1,000名程度のアクセスがあり、森林データへの関心だけでなく地形データにも様々な分野から期待されていることがわかりました。利用者層は森林・林業だけでなく、環境・防災や建築・土木などの分野のユーザーが多く、一方で個人が趣味で利用するケースも見られました。また、利用者の所在は3県が属する関東や近畿、中国・四国だけでなく他の県からの利用も見られ、データの流通が県単位に縛られないこともわかりました。事業者の多い関東のユーザーも多く、サービス開発などに使っていただけるという期待が感じられました。
さらに、これらのデータを使用して、森林データを活用できる森林マップが無料公開されたり、GNSS測量アプリにデータが実装されたりするケースも見られました。
2024年度からは本格的にオープンデータ化を進める予定で、他県のデータについても公開できるように取り組んでいく方針で、都道府県向けの補助金制度も作り、航空レーザ測量で取得したデータをオープンデータ化する場合はそれも補助する方針です。さらに、Web型のオープン化の手法も検討する方針です。
また、全国の約半数で航空レーザ測量が完了していないため、空白地域を埋めるために国土地理院と連携して、相互の測量計画など情報共有を密にして効率的な測量を行うことを検討しています。例えば令和6年能登半島地震では、林野庁と国土地理院で予算を一括で取得し、連携しながら測量を行うこととしています。
このほか、国土地理院が公表する航空レーザ測量の実施情報をGISデータとして集計し、都道府県の森林部局に配布するという取り組みも行っています。今後は地方と国、県林務部と県土木部、都道府県と市町村との連携も進めることにより、できるだけ効率的にデータを取得できるようにしていく方針です。
航空レーザ測量の進捗状況
■登記所備付地図データの一般公開について
スピーカー:法務省民事局民事第二課・補佐官 三枝稔宗氏
法務省の三枝氏が、「登記所備付地図(14条地図)」について発表しました。法務局では土地の位置や区画(筆界)を明確にするために登記所に地図を備え付ける事業を全国で実施しています。
不動産登記の登記記録の表題部に記載された事項のみでは、登記した土地が現地のどこに位置し、その区画がどのようなものであるかを明らかにすることはできません。そのため不動産登記法(第14条第1項)では、各筆の土地の区画および地番を明確にした地図を登記所に備えることにしています。この地図には、基準点に基づいて測量を実施し、各筆界点に世界測地系の座標値を与えており、地域に応じて測量の誤差の限度を設けて精度を確保しています。
地図を整備する意義としては、土地の区画を現地で明らかにする能力(現地復元性)が挙げられます。これにより、災害など様々な理由で筆界の位置が不明確になっても測量によって復元することが可能となります。
登記所備付地図の現状は、精度の高い地図が約58%で、残りの約42%は地図に準ずる図面(公図)となっています。いずれも電子データ化されており、これをオープンデータ化して2023年1月にG空間情報センターにて公開しました。公開から1週間でダウンロード数は約43,000件にのぼり、大きな反響が得られました。
今後は約42%を占める公図を精度の高い地図に移行させていくために、都市部の人口集中地区では法務省による地図作成事業、それ以外の地域については市町村等による地籍調査と役割分担することで、できるだけ早く整備していく方針です。地図作成事業については、所有者立会の下で筆界を一つずつ調査し、測量機器を使って正確に測量することで実施します。
公開された登記所備付地図データについては、サグリ株式会社の「地番検索くん」や株式会社マップルの「MAPPLE法務局地図ビューア」、オフィス白土の「今ここ何番地?」、株式会社NTTデータの「BizXaaS MaP」など民間企業による活用事例が次々に登場しています。
今後は、最新のデータを毎年2月頃に抽出し、毎年4月から5月頃に公開する予定です。このデータをより一層有効活用するためには、測量成果に基づく最新の座標値情報を有する精度の高い登記所備付地図の更なる整備が必要であり、整備を着実に実施するとともに、地図整備を通じて民間におけるデータ利活用および行政分野におけるアドレス・ベースレジストリやPLATEAUなどの施策に貢献していこうと考えています。
登記所備付地図をG空間情報センターにて一般公開
■東京都の取組
スピーカー:東京都都市整備局総務部先端技術調整担当課長兼調整担当課長 山田耕司氏/
東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部データ利活用担当課長 中村友子氏
はじめに東京都都市整備局の山田氏が、都市整備局版ベース・レジストリについて発表しました。都市整備局では、建設業者などが行政の手続きを行う際に、氏名や住所など同一事項を何度も記載したり、住民票などの確認資料を何度も提出したりする必要があることが課題となっていますが、このような手続きについて入力する申請データの重複を省き、ワンスオンリーを実現する仕組みを構築するためにベース・レジストリの整備の検討に取り組んでいます。
整備範囲は、法人登記など登記由来のベース・レジストリと連携するとともに、建設業許可申請システムや屋外広告物システム、建築確認申請システムなど様々なデータベースとリンクさせた上で、地図や案内サービスと連携することで使いやすいシステムを目指す方針です。
また、都民への窓口として、建築確認や建設業許可などで使用する行政手続の申請のためのポータルサイトの構築も検討しており、行政手続案内サービスとあわせて行政手続きの申請を円滑化する仕組みを検討しています。
デジタル庁は登記由来のベース・レジストリの整備と提供について2025年度中に新たな情報連携機能を構築することを検討しており、東京都では国からの情報提供を受けながら進めていきたいと考えています。
アドレス・ベース・レジストリについては、デジタル庁は地番や住居表示の整備について2027年度以降の提供を検討しており、東京都としては建築確認や屋外広告物許可など建物の地番や住居表示を活用する行政手続において利用を検討しています。ただし、建築確認におけるアドレス・ベース・レジストリの収集方法や未登記家屋の扱いについては整理が必要といった課題もあります。
図面情報の標準化については、2025年度から建築確認でのBIM図面審査が始まりますが、当初は審査対象がPDF図面で、BIMデータ審査導入は2028年度以降となり、同一データでの審査が可能となるのか進捗を見守る方針です。
行政手続の申請についてワンスオンリーを実現するための仕組みを構築
続いて、東京都デジタルサービス局の中村氏が「東京都デジタルツイン実現プロジェクト」の取り組みについて発表しました。東京都では、都が抱える様々な都市課題の解決を目的としてこの取り組みを実施しており、都政のQOS向上により都民のQOLを向上させていくことを狙いとしています。
取り組みの概要としては、3Dデジタルマップや点群データ、GISデータなどの「データ整備」、3Dビューア等の可視化システムによる「データ可視化」、各種アプリやシミュレーターによる「データ解析」の3つを柱に進めていく方針です。
当面は3D地図により現実空間を再現し、そこにリアルタイムデータを落とし込んで分析・シミュレーションを行った結果を現実空間へフィードバックしていくというサイクルを、費用対効果を考えながら各事業において取り組んでいく方針です。
このプロジェクトは2030年度を目標に取り組んでおり、3つのフェーズに分けて進めています。昨年度まではフェーズ1で、デジタル基盤の構築に取り組みました。今年度はシステム基盤の運用を開始し、庁内のデータを集めて以下の4つの施策に取り組みました。
1.有効なユースケース創出に向けた有識者検討会の開催
2.専用Webサイトにおける事業成果や取り組みの発信、3Dビューア上への多様なデータの掲載
3.社会実装に向けた技術検証や課題整理を行うためのベータ版事業
4.庁内の地理空間情報のデータ連携基盤の運用
3Dビューアによるデータ可視化