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第2回「シビックテックを活かした情報社会での参加の社会実装研究会」開催レポート
2025/12/16
東京大学空間情報科学研究センター シビックテック・デザイン学寄付研究部門(以下、CTDI)第2回「シビックテックを活かした情報社会での参加の社会実装研究会」が、2025年9月26日(金)13:00〜15:00にオンラインにて開催されましたので、ご報告申し上げます。本研究会には、シビックテックの研究者だけでなく、実践者、行政職員、企業関係者も委員として参加しており、研究と実務両面から議論を行いシビックテックを深く研究する役割を担っています。
活動報告「CTDIでの教材開発と公開授業」及び「シビックテックプロジェクトオープンデータベースを用いた定量分析」
東京大学空間情報科学研究センター特任研究員 藤野朝咲氏
本研究会ではまず、本年度上半期に実施された教材開発および公開授業の成果が報告されました。上半期には計10回にわたる講義やワークショップが行われ、最終発表会は2025年7月16日に開催されました。
受講生からのアンケート結果では、満足度は5段階中4以上が88.5%と概ね高評価でしたが、期待と実際のギャップや講義構成に関する課題も指摘されました。受講生から寄せられた感想やフィードバックを踏まえ、CTDIでは今後も教材およびカリキュラムの開発を継続し、
終了後も、Discordコミュニティを用いた学びの継続支援を進めるとともに、講義内容を整理し、再来年度の教科書出版に向けた教材開発を進行中です。
研究者からは「第一回で積極的な参加者が多く、率直な意見が得られたことが成果であった」とのコメントがありました。
研究会委員からは、シビックテックの実践者や企業とのさらなるコラボレーションの可能性について提案があり、次年度に向けた新たな取り組みの方向性が示唆されました。参加者間での活発な意見交換を通じて、研究と実践の連携を強化する重要性が改めて確認されました。
続いて、Civic Tech Field Guide という1万件以上のシビックテックプロジェクトを収録したオープンデータベースを用いた定量分析について報告しました。
この分析では、国別のプロジェクト数の割合や、各国で扱われているテーマ、プロジェクトのタイプ、ステータスなどを調査しました。結果として、アメリカ(最多)やイギリスなどのグローバルノース諸国のプロジェクト数が多く、国によって重視されるテーマに特徴があることが明らかになりました。例えば、ドイツではテクノロジー重視、フランスでは参加型民主主義、ブラジルでは透明性に関するプロジェクトが多いことが示されました。世界的なシビックテックの潮流が焦点となり、日本におけるシビックテックの特色について委員からコメントが寄せられ、日本のシビックテックが世界の中でどのような位置づけにあるのかが議論され、下半期に向けた研究への期待が一層高まりました。今後は回帰分析を進め、プロジェクトの継続性に影響する要因などを明らかにしていく予定です。
「シビックテックの新たな形―コレクティブインテリジェンスへの挑戦
デジタル庁 増田 睦子氏
続いて、デジタル庁増田氏より、「シビックテックの新たな形―コレクティブインテリジェンスへの挑戦と題して、デジタル庁の現在の動きや、ご自身の研究からの知見を発表いただきました。増田氏は、リサーチユニットの活動や、コレクティブインテリジェンスを活用した取り組みについて発表しました。デジタル庁では、政策立案に資するリサーチや、10年後20年後を見据えた未来志向の調査を行っています。特に、参加型リサーチとしてのコレクティブインテリジェンスの活用や、ハーバード大学やケンブリッジ大学の学生と共同で行う研究プロジェクトなどが紹介されました。
また、クリエイティブビューロクラシーフェスティバルでの国際的な事例として、インドの医療アクセス改善プロジェクトなどが共有されました。増田氏は、シビックテックは単なる技術導入ではなく、コラボレーション(Collaboration)、コレクティブ(Collective)、クリエイティブ(Creative)の「3つのC」を重視すべきであると強調しました。
「日本におけるシビックテックのあゆみと課題」
Code for Japan 代表理事 関 治之氏
最後に、Code for Japan関氏より、日本におけるシビックテックの活動と課題について発表しました。活動事例として、流山市でのMoripoや国立環境研究所とのアプリ開発、SNS分析ツール「Word Explorer」、豊岡市でのハッカソン・地域アプリ開発、Decidimを用いた市民エンゲージメント、会津地域でのLiving Lab型実践など、多様な取り組みが紹介されました。関氏は、シビックテックは本質的に参加型のより良い民主主義を実現するための取り組みであり、テクノロジーはその手段に過ぎないと強調しました。日本では市民主導、企業主導、行政主導など様々な形でシビックテック活動が行われており、それぞれに長所と課題があります。特に行政主導型では、予算確保や組織運営の利点がある一方で、「手段の目的化」「市民の受け身化」などの課題が指摘されました。
また、Code for Japanのブリゲードは全国に70以上あり、活動の裾野は広いものの、プロトタイプから実際の価値創出へのステップに課題があることも指摘されました。

委員からはシビックテックの効果を評価する方法について質問があり、関氏は市民参加の度合いやウェルビーイング指標との関連など、多角的な評価の可能性を示唆しました。また、海外と日本のシビックテックの捉え方の違いについて質問には、関氏は海外では災害対応や偽情報対策など目的が明確な活動が多い一方、日本では地域のブリゲードによる多様な活動が特徴的だと回答しました。その他委員からは、新しいサービスを生み出すことだけがシビックテックの目的ではないこと、持続可能なビジネスモデルの必要性などについて意見が出され、マーケットデザインの重要性が議論されました。
各発表後の質疑応答では、シビックテックの評価方法、行政との協働のあり方、持続可能性確保の方策など、多様な視点から活発な議論が展開されました。本研究会は今後も年度内に2回の開催を予定しており、委員の皆さまの知見を取り入れながら研究の深化と実践の推進を図ってまいります。